世界の水道水を分析した、興味深く実用的な本である。旅好きな人は、読んで損のない、必ず役に立つ情報である。世界中の大部分の国々は、汚れた水を飲んでいるということを、改めて考えさせられる。下水道の整備という地味な仕事が、都市の機能を、健康という観点で支えている。日本の援助した金は、地味な部分にはあまり使われずに、無駄を生んでいるらしい。古代文明の都市には、下水道の遺跡がちゃんと残っている。そう考えると世界の文明は、はたして進化しているといえるのか疑問である。
また逆に、日本の水道水は、世界からみれば羨ましがられるほど安全な水である。確かに、昔飲んだ水道水より、今の水道水は不味くなった気がする。しかし現在市販されている各種のミネラルウォーターが、本当に美味いのかは疑問である。たぶんレベル的には、水道水とたいして変わらないはずである。私が子供の頃飲んで美味いと感じた水の味の記憶より、市販の水は不味い。市販のミネラルウォーターが美味いというのは、大いなる幻想であると私は考える。日本の水が不味くなったのは、川や湖の水を我々が汚してきたからであり、美味い水道水を飲むためには川や湖の水質をきれいに保ち、塩素消毒の量を減らすしかない。それでも日本の水道水は、他の国々から比べればかなり贅沢な代物であろう。なにしろ、雑菌やウイルスに汚染されてはいないのだから。
「万物の根源は水である」という、古代ギリシャの哲学者ターレスの言葉がある。(この本の冒頭から引用)そして人のからだも、65%が水で構成されている。ということは、健康とは大部分が水でコントロールできるのかもしれない。最後にこの本の解説で、久保田昌治氏が言っている免疫の問題は非常に興味深い。
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