「神は銃弾」 ボストン・テラン 2000年
「フラッド」 アンドリュー・ヴァクス 1985年
アメリカの闇は深い。そこから、絶えず上質な薫りと味のする小説が、零れ落ちているのかもしれない。両方とも、なかなか満足のいく後味であった。最高傑作とまではいかないが、好い感じの酔いが楽しめる。ニューヨークの闇の匂いは、ヴァクスから漂い、乾いた砂漠の風はテランから吹きすさぶ。時代も場所も匂いも味も違う両者ではあるが、「アメリカという得体の知れない闇」が、その底を滔々と流れている。その歪みの中に、「アメリカなるもの(幻想)」の手がかりの一部を、僅か一掴みでも拾いあげる。そんな気骨と、芳醇を感じることができる作品であろう。夢想は尽きない。
ヴァクスのサイト チャプターワールド
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