アメリカの匂い、何処までも同じ景色が続くハイウェー、街と街を繋ぐ。狂気の男が次々に殺人を犯す。殺人とは本来、人間の禁忌である。しかし殺人を犯す者は後を絶たない。この日本でも最近ぶっ飛んだ事件が多い。権力(国家)が、もはや幻想で国民を支配できないからなのではないか。物語を提供できない。しかも非日常の場もほとんど形骸化した。残されたのは、戦場という非日常の空間だけだ。もはや国民(世界)を支配しているものは、貨幣という眼に見えない化け物。その論理は自己増殖だけだ。悪性のがん細胞のように世界を覆う。ヨハネの黙示録のように。貨幣の論理が、イラク(9.11も含む)、環境破壊等の問題でも優先されている。人は無意識に主役の交代を感じ取り、法という幻想を乗り越える。また逆に国家は幻想での支配から、物理的支配(警察力強化、衛星管理、コンピューター等)によって国民を管理支配する力を強める。その中で人はどう生きるか。
さて本書であるがなかなか味のある作品だ。これらの小説にありがちな、虚無的なところが無い。闇の世界を描きながらも、核がある。流されていない。解説によると作者の経歴も異色で、ネイティヴ・インディアンの血を引き、様々な職を転々とした後に作家になったという。アメリカでは、カルトな存在であったらしい。くじ引きで当たりを引いた感じ。読後感がいい。私は好きだと感じた。
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