蝙蝠は、昔から様々な怪奇幻想の世界に登場する生き物である。ある文化では善玉であり、またある文化では悪役を演じていたりもする。その実態は、もともと害虫の蚊や蛾を食べてくれるありがたい動物であり、農業をする人達にとっては、とても役に立つ動物である。現在、蝙蝠は哺乳類に分類されているが、昔の人はその姿から、鳥だか獣だかわからない不気味さを嫌ったのかもしれない。江戸時代までの日本では、蝙蝠を鳥として扱っていた。東洋世界では、蝙蝠は嫌われ者ではなく、福を運ぶ縁起物と信じられていたらしい。しかし西洋では、何故悪役に結びついたのか。それはキリスト教の影響なのではないだろうか。蝙蝠は、洞窟等の暗闇で生活することから、キリスト教異端の黒ミサ等、闇や地下で執り行われた儀式にイメージが紛れ込んだのではないだろうか。夜に活動する蝙蝠の習性も、闇に生きる人間に重ねられた。そして鳥だか動物だかわからない二面性、中国では「百年以上生きた鼠は羽が生えて蝙蝠になる」という伝説がある。
子供の頃、夜になると家の前の畑では、無数の蝙蝠が飛んでいたことを思い出す。夢想は尽きない。
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