いつでもどこでもピンチョンの小説は、難解だ。どこに行き着ける所なく、すべてのものを煙に巻く内容は、どこにいくのかわからない。そして、私達が到底わからない、どうしようもない時代の中の体感温度の中のカルチャーが、小説の中にちりばめられており、私達の想像を遮断するのである。
日経新聞の日曜日版の書籍コーナーでは“ピンチョンは時代の全てを描こうとする百科事典的な小説の書き手と知られる。−−−それゆえ難解と−−−本書ではその種の難解さは一見陰をひそめている。———”だからおすすめできる。といっているのではあるが、私にとってはやはり難解であり、どこに面白さがあるのか、“オーイWhere you come from? “ となってしまうのである。
都甲孝治氏の“21世紀の世界文学30冊を読む”の中のピンチョンの“ INHERENT VICE ”に関する解説の肝は、”1970年のカルチャー、ヒッピー、の敗北、セックス、ドラック、ロックでは世界を救うことができずに、コミューンの失敗、そしていくら一般社会から離された理想社会を作っても、人間は自分の内側にある悪から逃れられない”それが、inherent viceであるというのである。(20章)しかし、小説の中のギャグがわからない私に面白さがわからないのである。
多くの人がピンチョンを“V”“重力の虹”以降褒め称えるが、この謎説きはとても難しい、もしくは不可能だ。それでも彼の作品を読むのは、薄っぺらいジョークの中に時間が、その時が内蔵されており、それは私たちの人生と重なるあきらめともつかない自分の時間でしかない、人生のセピアを色濃く出しているからである。
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