「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」 押井守 監督
1995年版を観た。この世界観はやはり凄い。面白かった。何度も見返したくなる作品である。そこに流れる情念のようなもの。希望と絶望が綯い交ぜになり、揺れる世界。
それは、彼の学生運動との関わり(それがどういう形であれ)が少なからず影響を与えているように感じられる。(「SF小説」「映画」「学生運動」に特にはまっていたのは、現実から逃避する為であり、政治運動に興味があった訳ではなかったと語られてはいるが。)アニメと学生運動とは意外なとりあわせだが、1968年、高校在学時に羽田闘争をきっかけにして、それに参加していったらしい。その出身者は、いろいろな分野で面白い優れた仕事をしている方々が多い。そこで見た夢を多かれ少なかれひきずって、エネルギーに変換し、投影しているからなのかもしれない。
その時代を知らない私にとって、それがどんなだったか、ふと関心をおぼえたりもする。向かうべきものを見失った情念が基底に流れる河は、ダークな闇の中を、超越的ななにかに縋るかのようにその意識(GHOST)を委ねる。それは魅惑的でもありどこか違和感を感じるのだ。この作品のバックグラウンドに流れる様々な思想・宗教・哲学等が混然と、広大な情報という海に収斂していき、その向こう側にあるなにか、朧な夢を見させる。「GHOSTが宿る」それは、「生命」という曖昧な境界線を微妙に揺れ動き、正直まだよくわからない。そしてそこに謡が重なり、感覚がさらに揺すられ、この不思議な音色は、さらなる迷宮へと誘うのだ。
吾が舞えば 麗し女 酔いにけり
吾が舞えば 照る月 響むなり
結婚に 神降りて
夜は明け 鵺鳥鳴く
遠神恵賜
謎。それで続編にあたる「イノセンス」という作品を、益々見てみたいと思った。宮崎駿とは、明らかに感覚的に異なるように映るのだが、それぞれ別のルートから似たような頂を目指しているような感じがしないでもない。それでも、彼の暗い情念の籠った作品の方が、私の性には合っている。夢想は尽きない。
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