最近、江戸川乱歩の作品を読み返したくなり、ちょこちょこ読んでいる。なんといっても、その魅力の一つに挙げられるのは、本のタイトルである。「蜘蛛男」これだけで、この本は何なんだろうかと一気に引き寄せられる。人は無意識の裡に、タイトルを見た瞬間その内容を透視しようとする。本来、本を選ぶという行為は、直感的なものが深く関わる神秘的なものである。だんだん知識に邪魔をされ、その評判や評価によってその直感なるものがだんだん曇らされていく。子供の頃の本の選び方を思い出してみても、タイトルと直感で非常に素直に本を選んでいたような気がする。本を選ぶ愉悦みたいなものが、義務感のようなものに邪魔をされていくと人は本を読まなくなるのではないだろうか。また逆に、本に呼ばれるという不思議もある。ずらーっと並んだ棚の本の背表紙を眺めていると、一瞬閃きにも似た感覚が訪れ、無意識に手に取らされていてその本が欲しくなる。それは、今まで全然関心の無い本であったり、あるいは探していた本であったりもするのである。
薄れゆく直観力のなか、素直に面白い本が読みたいと思う。夢想は尽きない。チャプターワールド
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