画面に釘付けにされて動けなかった。かなりやばいですこの映画。初めは軽く楽しめればいいやと思い見始めたら、脳天にガツンと一撃を食らってしまった。いい意味で期待を裏切られました。映像も音楽も美しく、観て損はないお勧めのやくざ映画です。ただし観終わってハッピーな気分にはなれません。暗くどす黒いものが心にこびりついて、しばらく呆然となった。最近こういった毒の有るものが少ない。良くも悪くも芸術は精神を直撃して欲しい。この映画はただ滅びに向かって淡々と突き進む。そこに感傷は無い。かといって乾いているわけでもなく、暗くぬめぬめしたものがそこにある。主人公のやくざを演じた、俳優の岸谷五郎がかなりいいです。彼の存在感がこの映画に緊張感を与え、観る者を暗い闇の世界へ引きずり込む。人間の精神の闇とはなんだろう。自分が知らない(見ようとしない)部分に、黒いぬめぬめが静かに息づいているのだろうか。この映画に救いは無い。だが最後に主人公のやくざが、刑務所の屋上から風を受けて鳥の様に飛ぶシーンが有る。彼は何処に向かって飛び立ったのか。
人は光の部分のみを近づけ、闇の部分を遠ざけようとする。しかし闇は光が無ければ感じられないし、光もまた闇が無ければ輝きをなさない。光と闇が共に存在するのには何か意味がある。
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