面白くて一気に読み終ってしまった。ああなるほど、横尾忠則とは、こんな感じだったのかと妙に納得した気がする。昔から気になる存在であった。なにしろ、私がインドに関心があった頃に惹かれた本が、藤原新也の「印度放浪」と横尾忠則の「インドへ」であったからだ。当時、インドについての本で面白そうなものは、それぐらいしかなかった。20年以上昔の話にはなるが。その後、どこか如何わしく感じた時期があり、関心は薄れてしまっていた。でも絶えず、私が興味を魅かれる本の装填に、横尾忠則の印象に残る独特な絵が描かれていて、その存在は付きまとい離れなかったのだ。
でも今回はなんかわかった。この本に、感覚的にとても近しいものを感じたからだ。だから以前のような、変な異和感を感じることなく、すんなり響いた。まあ突拍子のない現象に関してはなんとも言えないが、それはそれでどうでもいい気がする。それよりも、忘れかけていたヒントをもらった。それは「素直に生きるということ」であり、「直感を信じる」ということである。これはなかなか難しいことだ。でも、残りの人生をどう生きるかを考えるうえで、私にとって意味深いものがある。この本に呼ばれたような、そんな、ちょっと啓示を受けたような不思議な出会いだった。
いわゆる「駅場」の縁というのかな、旅をする因縁を持って生まれてくる人がいるわけ。そういう人は生まれながらに常に旅ばかりしている。旅をすることで調和を保っている。旅をしないと具合が悪くなってしまう。まあ人生そのものが旅だから、旅行は人生の雛形だろうね。中略
よくどこへ旅するといいかと聞かれるけど、勧められて旅はするもんじゃないと思うね。ふっとそこへ行きたくなって行くのでなければ、意味がないわけ。中略。目的のない旅のほうが理想だね。旅そのものが目的でなきゃ、けっして楽しくない。
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