以前から気にかかっていた、藤原伊織を初読み。時を放り投げ、ラーメン屋で没頭する。素晴らしい作品であった。夢中になり、その世界から離れがたい、他の瑣末事がどうでもよくなる瞬間を持つ作品は、それほど多くはない。そんな一冊。たぶん、この小説世界に嵌れるかどうかで好みは分かれるのだろう。しかし、この世界は創られたものであるが、まがい物ではない。旨いものに理屈はない。それは快楽であり愉悦であろう。言葉が孕む神秘的な力。恩寵。
藤原氏は、差し迫ったギャンブルの借金1000万の返済を、この作品で乱歩賞をとることに賭けた。乱歩賞の賞金が当時1000万だった。自信があったという。しかし、去年亡くなられた。残された作品は10あまりである。惜しまれる。夢想は尽きない。
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