1982年の作品。冒頭のシーンから惹きこまれた。たしかに昔は、改札に切符切りがいて、そのハサミでリズムを刻んでいた。すっかり忘れていたその音と風景。監督は、「ピンク映画の巨匠」などと形容され、1960年~1970年代にアンダーグランドの世界から、映画でエロス・暴力・政治を表現し、先鋭的作品を残してきた。当時、全共闘世代に熱烈に支持されたともいわれる。この作品は一般映画だが、この監督で主演に内田裕也ときたら一筋縄ではいかない。
これは犯罪映画であり、強姦魔の話なのだが、映画としては面白かった。この監督には、やっぱ流石だと思わせるものがある。なんというか、一本ピーンと筋の通った、気魄というか緊張感のようなものが、細部までいきわたっている。だから、エロティックで暗い情念の話でありながら、どろどろした陰惨な感じはしない。それは、快楽の向こう側にある何か、根源的なものに迫ろうとする意志が貫かれているからかもしれない。その闇の部分に対する拘りは、どこか突き抜けている。なかなかいない、特異な映画監督であろう。内田裕也の演技は不気味な印象だけが残り、いまひとつよくわからなかった。傑作とまでは言えないが、不思議な感覚を持った作品であった。 この監督は、他の作品も観たい。夢想は尽きない。
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