一風変わったやくざ映画で、しぶかった。それは悪い意味でなく、今まで観たやくざ映画の範疇からはみだす怪作である。余分なものを削ぎ落とした映像、それでいて風変わりなエピソードが実に効果的なスパイスとして効いている。けっして豪華な作品ではないのだが、奇妙な味わいに釘付けになってしまった。幻想的な雰囲気を漂わせるやくざ映画といえる。
この作品が異色なのは、「都市」というものを感じさせない点にある。時代(近代)からとり残されていく侘しさのようなものが、街、人、精神、映画全体に覆いかぶさっている。その色褪せた色彩「錆びれゆくものども」が、妙に心を捉える。そして、対照的に、仲間の供養の為に「霊場」をめぐる山岳シーンが実にいい感じだ。「山」という、古来からの信仰の対象、その大きさ、生命力が、ちっぽけな人間世界など呑みこんでいくようでさえある。すべては錆び風化する、でもそうならないものの存在を詠った、異色のやくざ映画である。夢想は尽きない。
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