「殺人の追憶」 ボン・ジュノ
2003年の韓国映画を観た。1980年代、ソウル近郊で実際に起こった、未解決の連続殺人事件を題材に描いている。韓国映画には、凄まじい情念のこもった面白い作品がけっこうある。だから韓国映画には期待があり、たまに観たくなる。日本映画(世界の映画)が失った、何か力漲るものが、まだ残っているように感じられるから。もちろん駄目な作品も多いのだろうが。
この作品の評価は、ネットで見る限りかなり高い。でも私には、「だからなんなんだ」という思いが残っただけだ。暗く重い、作品である。映像は、さすがだと思わせられ、ぐいぐい惹きこまれてはいく。印象に残るシーンもあり、人の闇の深さを考えさせられたりもする。だが何かが足りないような気がする。天に飛翔する何かが。勿論、それはちんけなヒューマニズムなどではない。もっと本質的な、抉られるような何かが、描かれていないような気がするのである。幻想は果てしがない。
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