「孤島の鬼」 江戸川乱歩
乱歩を久々に読んだ。小学生の頃、学校の図書室にあった少年探偵団シリーズを夢中になって読んだ記憶が、片隅に焼付いている。アルセーヌ・ルパンやシャーロック・ホームズも好きではあったが、乱歩の飛びぬけた、妖かしの世界に触れるとそれらは色褪せるように感じられた。
孤島の鬼は、昭和4年に連載開始された作品。今読んでも古臭さは全く感じない。まさに、ぶっ飛んでいる。現代においては、もはや生まれ得ない、アンダーグラウンドの雄であろう。何故に、乱歩はここまで支持され受け容れられてきたのか。作品自体が、滅茶苦茶優れているとは思わない。その中にある、日本人の血というか、古代から脈々と繋がる歴史の闇、懐かしさのような感覚。現在とは違う価値観で生きていた時代への郷愁みたいなもの。でもよくわからない、そんな不思議な魅力に満ちている。夢想は尽きない。
コメント