第二回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。これはなかなか面白かった。えもいわれぬ狂気と、存在の闇が香りたつ。ホラーという体裁を纏ってはいるが、なかなか鋭く奥が深い。この本の中には、二編の作品が収められている。両方共に味わいのある作品で、どちらも奇妙な感覚。「生物と無生物の境界とは」「時間、意識、因果とは」が、それぞれの作品の味付けになっている。前者がホラー、後者がSF(タイムトラベル)の形を取っている。しかし、その底流に流れるものは、「存在とは何か」という、狂気と紙一重なものが全体を貫いているように感じられた。他の作品もぜひ読んでみたくなった。本には、存在を揺るがす、秘めたる力があったりもするのである。その出会いが楽しい。幻想は果てしがない。
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