傑作である。素晴らしい言霊に抱かれている時間は、本当に贅沢な、至福のときではないだろうか。隆さんは、60歳から書き始め、5年後に急逝された。その5年の間に濃密な作品が残されている。この作品は「吉原御免状」の続編にあたるもので、前作よりは落ち着いた抑えめのトーンが心地いい。そしてこの作品は、分岐点みたいなもので、興味深いテーマに枝分かれしていき、それらが隆さんの他の作品を含めて、一つの大きな世界に展開していく。あと10年長生きしていれば、その壮大な世界は完成したのだろうか。残念である。しかしどの作品をとっても、比類なき凄みを秘めている宝物なのである。この作品の先に彼が見たものは、はたして。
夢想は尽きない。
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