傑作である。この人の作品はどれも素晴らしい。ちなみに、この「吉原御免状」が処女作である。この人の作品は、読まなければ損をする。一生の内にどれか一冊だけでも読んでおくべきである。この日本の歴史とは、教科書で習ったような平板なものではありえない。そこには、「道々の輩」と云われる、全国を流浪漂白して生きる人々が存在した。彼らは、国家の枠組みからはみだした無縁の徒であり、それ故に、本来の意味で「自由」であった。彼らさすらう者は、海民、山民。鍛冶、大工、鋳物師の職人たち。楽人、舞人から獅子舞、猿楽、遊女、白拍子にいたる芸能の民。陰陽師、医師、歌人、能書、算道など知識を売る面々と武芸を売る武人。博奕打、囲碁打などの勝負師。傀儡子、山伏、巫女、勧進聖、説法師、そして各宗派の公界僧たち。そして彼らは、天皇にも繋がっていた。それは縄文の人々にも繋がるであろうし、現代にもいろいろな所にその痕跡を見出せるのではないだろうか。これら歴史の闇に隠された彼らの影響力は、日本をかたちづくったといえなくもない。そしていまも。これらは、かなり深い闇のなかにある。幻想は果てしがない。夢想も尽きない。
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