以前からずっと気になっていた作家である。まずその題名と、本の分厚さにそそられる。私は長編小説のほうが、短編小説より好みである。面白ければ、長ければ長いほどいい。さて今回は、期待に違わぬ面白さであった。まさしく奇書であり、異世界に遊べるというか、夢のようにたゆたっていられる。ミステリー(エンターテイメント)の世界に分類されてはいるが、そこには収まらない深さがある。
この「姑獲鳥(うぶめ)の夏」が、この作家のデビュー作にあたる。1994年に刊行されているので、10年以上もたっているのだ。ほんとうに面白い小説の世界に嵌ると、他の一切がどうでもよくなる。ただひたすらその本の世界に入り、その世界から抜けでるまで、他のことは何もしたくなくなる。そしていいものは、また余韻がいい。そういった読みたくても、読むと危険な匂いがする本が、私の部屋には積まれてその時を待っている。本は一歩間違えると危険なものであり、嵌ると阿片のように人を廃人にさせる力も持つ。夢想は尽きない。
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