暗闇を感じる?
なにかの新聞か雑誌で読んだ記憶がある。真っ暗闇の空間をただ進む、展覧会があることを。それはドイツで始まり10年以上の歴史を持つ。そこでは普段頼っている視覚という感覚を閉鎖し、他の感覚器官を覚醒させて別の世界を体感するというコンセプトである。私はまだ体感したことはない。でも興味を魅かれる世界ではある。体感した人の話を読むと、実際体感してみないとその世界はわからないと皆一様に答えている。理屈では想像できるのだが、その想像を超えた世界が現出するらしいのである。
一昔前までは、まだ人の暮らしには闇の時間があった。闇は、人の暮らしに密着したものであり、それがあることが本来の姿である。ほんらい人は、闇の世界でもある程度対応できる力を持っていたと思われる。それが身体の知、動物的な力又は野生の力等と呼ばれているものなのではないか。現代、闇を追い払い、視覚に大きく依存するようになった人の感覚を、過去の人が持っていたであろう感覚に近づける。その感覚のほんの一部を、擬似的な闇の空間から呼び覚まし追体験することができる。時を遡る壮大な実験であるともいえよう。人の感覚は絶対的に信頼できるものではない。夢想は尽きない。
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