この人の作品を読んだのは、これが初めてである。オリジナルは1998年に刊行された、これが長編デビュー作である。私はこのての怪奇幻想物語にもめがない。気になるものを見つけると、とりあえず買っておく。はたしてこの作品は、合格である。面白い。また次の作品も読みたくなる。舞台設定がいい。明治から昭和初期にかけての浅草、吉原、ひいては東京の雰囲気が心地よい。本を読むことは旅に似ている。未だ見ぬ場所、知らない世界へと、この人は読む者を異界に連れて行ってくれる。はたして現世とは何か。現世と異界、いや多元宇宙を、この世界は一つではない、我々は多次元の世界に同時に存在しているのであろうか。まだ語りえぬものがこの人には詰まっていそうである。夢想は尽きない。
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