ラーメンという不思議な世界
うちの近所に、「夢の途中」という一風変わったラーメン屋がある。カウンターのみの、6~7人しか入れない小さな店である。味はまあまあ、飛びぬけて美味いと思ったことはない。でもそこらのラーメン屋とはあきらかに違っている。なんというか、その店独特の小さな世界があるのだ。見た目は別に変哲もない。薄暗い店内にボブ・ディランがいつもかかっているぐらいだ。しかし、なにか真剣な感じというか、神聖な雰囲気が伝わってくるのだ。その日出すスープしか作らず、無くなったら店を閉めてしまう。そのためか、その日の一杯一杯に思いを込めているのが伝わってくるからなのかもしれない。職人ぽいというか、常に自分の味を研究しているのであろう。だからこの店の味は、まだ完成していない。ちょくちょく行くわけではないが、少しずつ変化していく。そういう意味からも、「夢の途中」という店の名前の世界そのままなのである。だからたまに行ってみたくなる。その夢を見に。
ラーメンの世界は、奥が深すぎて底が見えない。なかなか真に満足するということがないのだ。ラーメンは、真の技量が問われる真剣勝負の世界でもある。またその幻想を食べにふらっとラーメン屋に行ってしまいそうだ。幻想は食べ尽くせない。
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