西原理恵子はおもしろい感性をもった漫画家である。虚飾を剥ぎ取ったところにある無垢な何かを表出させ、記憶の奥底に眠る痛い場所を抉る。懐かしさと共に痛みを感じる。しかも毒を併せ持ち、綺麗事とは無縁。そんな世界に浸ってみるのも悪くない。
私は子供の頃から人(他者)との付き合いが苦手であり、関係性の中で上手く立ち回ったり演技するのが得意じゃない。この近代の社会で生きるには不適格な部分を抱えて生きてきたし、これからも生きていく。だから表より裏、正統より異端に惹かれてしまう。ちょっと世間からずれている人に関心がある。一歩間違えれば、ホームレスになる可能性もおおいにあると自覚しているつもりだ。それでも旅に生き、死んでいく人生に憧れてしまう気持ちは変わらない。人は楽しみが無ければ生きられない。人生とは自己満足。そして自分の人生を蕩尽する祭り。
西原理恵子は、人の持つ優しさと残酷さを作品の中で昇華させる。なんかこのシステムの中で上手く生きられないと感じている人には、シンクロするであろう。現代の社会が捨て去った、人間の本質的で大切なものが封じ込められた作品である。ふと棟方志功の作品を思い出した。
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