花村萬月は、好きな作家の一人である。それは、ヒトの強烈な闇の部分を描こうとするからだ。作者の暴力とセックスに対する描写へのこだわり、そこから炙りだされるもの。読み手に撃ち込まれる闇は、重たい。しかし読後に、なにか解放された感覚を得ることができるのは、作者がその闇に飲み込まれず、溺れない、強靭な意志と気魄があるからではないだろうか。
この作品も一歩間違えれば、ポルノ小説に堕すものだ。でもそうはならない。ほとんどセックスの描写なのだが。ラストで主人公は、朝の光に後押しされて無限の時間に旅立っていく。光に帰っていくのだ。誰もが10代の頃に持っていたであろう、「明日のことなど考えない、今日、しかないという感覚」そんな懐かしさを喚起させられた。しかし、彼の他の優れた作品と比べるといまいちである。彼が撃ち込む闇の衝撃は、まだまだこんなものではないからだ。夢想は尽きない。
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