「フェイス/オフ」 ジョン・ウー監督
いまではハリウッド映画に、あまり関心がなくなってしまったのであるが、ジョン・ウーの作品には若干興味と期待がある。この作品に関して言わせてもらえば、ところどころ好きなシーンはあるものの、全体として期待を充たされるには至らなかった。
彼は香港からハリウッドに移った映画監督である。その香港時代(1986年)に、傑作「男たちの挽歌」を生み出した。この作品は、大好きだ。私が観た東西の暗黒映画の中でも、十本の指に入る傑作であると考える。秀逸な出来栄えの作品だ。ここから香港ノワールという、日本のやくざ映画にも通ずる美意識をもった作品が、生み出されていく。そして彼は「バイオレンスの詩人」とも呼ばれるようになった。
彼はハリウッド映画の枠組みの中で、はたして新たな傑作を生み出すことが出来るのであろうか。この映画を観る限りにおいて、はなはだ疑問が残る。それは、アジアの血(幻想)みたいなものが、西洋とは異質な、相容れない部分を抱えているような気がしてならないからである。香港は確かに一時期、イギリスと中国が雑じりあって存在した。だからといって、根本的な部分で西洋とは異質な文明である。アメリカのマフィア映画とはまた異なる様式美があり、それらは容易に交じり合わないはずだからである。一つには、複雑な余韻のようなものであろうか。夢想は尽きない。
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