魔裟斗、凄みある優勝
凄い試合であった。魔裟斗選手は、これぞまさにプロフェッショナル。本物の凄みを残した。そして、本物のプロの試合とはなにかを、体を張って観客の脳裏に刻んだ。こういう試合に出会えることは、格闘技を観る者の最大の悦びである。彼の2試合は、格闘技の表現の枠を超え、存在の根源に迫った。だから、そこに感動が生まれた。
凄絶でぎりぎりの戦いであった。しかし、彼は最後まで踏みこんだ。その勇気が無ければ、名勝負は生まれなかったはずである。天晴れというしかない。
魔裟斗選手の顔付は本当に変わった。以前はどこか険のある、ジャッカル・ハイエナ類をイメージさせるものがあった。だが最近はそれが抜け落ちて、どこか柔和になり、猫科動物のしなやかなイメージに変わっていった。その変貌ぶりから、以前に無い強さと自身を身に纏ったことが感じられた。だから今年は、彼が一番強いであろうと、そのとき直感したのだ。
試合が終わり、総てを燃焼しつくした彼の表情は、とても印象的なものであった。仏のような、恍惚とした、異世界から戻ってきた者の如きでもあったからだ。非日常の空間に一瞬観る者を連れ去る、それこそが真の芸術であり、「勝負」などという枠を超えて、「神」を感じさせる瞬間でもある。
幻想は果てしがない。
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